[0]:TOP
[1]:

『最後のデート』

これが最後に
なるとも知らずに

最後の待ち合わせをし
どちらかが
最後の遅刻をし
最後の食事をし
最後の映画を見
最後の夕焼けを見

最後の
そぞろ歩きをし
最後の喧嘩もし
さらには
最後の仲直りをし
最後の手を握り合い

海には今度
行こうね、と
最後の約束をし

きらきらと瞬く
最後の
都会の星を
眺めながら

うん
口付けも
今度にしようね、と
今日は少し
風邪気味なんだ、と
最後の照れ隠しと
言い訳をし

駅の人ごみに
消えてゆく
最後のきみの後姿を
最後の手を振って
最後の微笑みを
交し合いながら

ずっと
消えてゆくまで
見ていた

もう二度と
会えなくなるなんて
知らずにね

最後の人ごみの中で
最後のやさしい
幸福な風に
包まれながら
ひとりになっても
さびしくなかった

最後のきみの
余韻に満たされながら


もう二度と
会えなくなるとも
知らずに
微笑みながら
別れてゆく
ぼくら愚かな人間たち

明日の定めも知らず
ただ
子供のように
また
会えることを信じて

毎日
けんめいに
生きてきたのに


あれから
もう二度と
会えなくなって
しまったことはね

きみのせいじゃない
ぜったいに
きみのせいじゃない

突然いなくなって
しまったぼくを
それでも
なお
まだ
必死でかばおうと
してくれる
きみの涙の
しずくのきらめきが

遠い
宇宙の果てからでも
見えるようだよ
だから

どうか
海には
別の誰かと
行って下さい