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『ラストダンス』
女の子と
一晩だけ
ダンスを
踊ったことがある
ダンスといっても
彼女の 体調が
あんまり
良くなくて
ふたりとも
少しも
動かなかったから
正確には
ダンスとは
呼べない
かもしれない
けれど
しずかに ただ
じっと
彼女が ぼくの
うでに
つかまって
いたんだ
そうして 一晩中
星空の砂浜に
突っ立っていた
時々 ぼくが
歌ったり
彼女が
笑ったり
それから
ふたりとも
黙っている時は
しおざいが
ひびいていた
夜が明け
一晩中
血相を変えて
彼女を
探し回っていた
連中が
海岸にやってきて
みんな
ぼくに向かって
おまえは
自分が
何をしでかしたか
わかって
いるのか、
と
言いながら
彼女を
連れ戻していった
それから
しばらくして
きみは
きみが 一年中
横になっていた
ベッドから
ふいに
いなくなり
彼らは
誰もみな
その
きれいに整った
ベッドの
白いシーツを
眺めながら
泣き崩れた
きみは もう
どこにも
いない、とね
この世界から
いなくなった、と
だから
誰も
信じようと
しないんだ
そのベッドから
いなくなった
くらいで
この世界が
どれだけ広くて
世界中に
どれだけの人が
毎日
生きているかも
知らないで
この世界
この宇宙と
呼ばれる空間が
何千年
何万億年
続いているかも
知らないで
ただ
その
小さなベッドから
きみが
いなくなった
くらいで
ただ
その小さな
ベッドから
ほんとうは
きみは
生きているのに
いまも
きみは
星の降る砂浜で
女の子と
一晩だけ
ダンスを
踊ったことがある
それから あと
ぼくの
ダンスの相手は
風だけ