[0]:TOP
[1]:

『少女へ5』

わたし
あなたから
生まれてきました


それは
あなたが
まだ
夏服もぎこちない
中学一年の
夏の
教室の片隅

クラスのみんなが
ひとりの
無口な女の子を
取り囲んでいましたね

あなたは
最初
知らない振りを
していた

けれど
彼女への
みんなの攻撃は
日増しに
エスカレートしてゆき

ある日
誰かが
彼女の
セーラー服を
脱がそうとしたので

とうとう
たまらなくなった
あなたは
席を立ち
勇気を
振り絞って

みんなに向かって
言いましたね
その瞬間から
今度は
あなたが
標的に
されることを
覚悟しながら

「もう やめてよ」と


その時
この世界の
遠い
どこかの
樹の下で

いっぴきの
せみの
幼虫だった
わたしの
かたい殻に

あなたの方角から
やさしい
ひとすじの
光が差して

殻はやぶれ
その瞬間
わたしは
思いきり
羽根をのばし

あなたのいる
この
愛に満ちあふれた
世界へと
飛び出すことが
できたのです

そして
わたしは
あなたと同じ
この世界の
空気を吸い

あなたと同じ
この世界の
太陽の光を受け

あなたと同じ
この世界の
風景を眺め

あなたと同じ
この世界の音に
震えながら

あなたと同じ
ひと夏を
生きることが
できたのです

あなたの愛に
つつまれて


わたし
あなたの
涙から
生まれてきました