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[1]:夏
『いいわけ』
ぼくは 彼女に
さようならとは
言わなかった
ぼくは 彼女に
さようならを
言わなかった
ぼくは 彼女と
さようならを
交わさなかった
夜空を見上げると
満天の星が
瞬いていた
きみが
去っていった
夜だというのに
静かに 風が
ぼくのほおをなでて
吹きすぎていった
きみは いまごろ
どのあたりを
旅しているだろうか
ふと ぼくは
そんなふうに
本当に 自然に
そんなふうに
思えた
強がりや 慰めや
気休めじゃなく
確かに
そんなふうに
思えた
今 ぼくは ひとり
きみが 好きだった
港の灯りを
見ている
何も 考えず
ぼんやりと
ただ ながめている
こうやって
きみと
出会ったことも
きみと
もう二度と再び
会うことも
なくなって
しまったと
いうことも
みんな
すべて しずかに
忘れてしまっても
いいと
思うくらい
きれいな
港の灯りを
ただ ながめている
昔
この風景を
愛していた
ひとりの少女が
いたことを
ただ しずかに
忘れてゆくように
そして
そのとなりで
ぼくが 生きていた
ことさえ
みんな
忘れ去って
ゆくように
ぼくは 彼女に
さようならとは
言わなかった