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『少女へ3』

この地球の片隅
未開の大地のかたすみに
歌うことの好きな
一人の少女がいて

少女は 夕ご飯の後
こっそりと 家を抜け出し
近くの森に行って
歌うのです

眠る動物たちや
風のざわめく森の
木の葉や
幾種類もの 大小様々な
虫たち 鳥たちがいて

少し向こうには
荒涼と広がる
砂漠があって
月の光にさらさらと
無数の砂の
一粒たちが瞬いて

みんな
少女の歌を
聴いているのです

けれど
彼女の歌を
耳にすることができるのは
彼らだけ
彼らがレコード会社に
彼女を売り込んだり
TVで宣伝したりは
しないのです

少女は この世界に
歌手という職業があることや
いろんなジャンルの音楽が
あることも知らず

ピアノやギターといった
楽器のこともしらずに
大きくなって

この地球の片隅
未開の大地のかたすみで
誰かと恋をして
また
自分の親たちが
そうしたように

元気な男の子や
女の子を
この大地の中で
産むのです
たくましく 力強く

子供たちは
彼女のおっぱいを
思い切り 吸い込みます
少女は少しずつ
年を取り

いつか
夕ご飯の後に
森に行くことも忘れ
あの
森を震わせるほど
だった
少女の美声は
そうして
静かに
失われてゆくのです

この地球の何処かで
誰かが
ピアノやギターの
演奏をバックに
何万人もの
観衆に向かって
歌いかけている
その時に

人知れず
少女の
夢にもならなかった
歌への想いは
ついえてしまうのです


けれど
思い出してみて下さい

たとえば
明日 きみが
眩しいスポットライトの中で
ひとりの歌手として
デビューする時

きみが
どうして
歌を歌おうと思ったか
なぜ
歌手になろうと
願ったか
そして
もう 遠い昔
ひとりぼっちで泣いていた
幼い きみの耳に
どこからか
聴こえてきた 歌のことを

それは
もしかすると
この世界の
夜の闇の彼方から
海を越え
砂漠を越え
また
遥か 遠い
時を越えて
やってきた
少女の歌
だったのかもしれません

ただ
泣き虫のきみを
励ますために