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[1]:冬
『悲しみ』
わたくしという
よごれた魂が
新宿という
よごれた街の
地下道の脇に作った
ダンボールの家の中で
眠っている
人々は
わたくしを哀れみ
軽蔑のまなざしを向け
時には追い立て
通り過ぎてゆく
それでも
わたくしは
この街の夕暮れを
愛する
この街のむさくるしい
夏の人波の中を
駆け抜ける風を
愛する
埃にまみれた
こんなわたくしの
ほほさえやさしく
撫でてゆく
唯一の
逃げ場所といえる
夢の中でだけ
微笑みを浮かべ
ふいにさされた
蚊のいたみで
目を覚ます
わたくしの
てのひらの中で
絶えた
蚊の生命さえ
いとしく思う
わたくしという
けがれた魂が
吉原という
けがれた街の
ネオンの波を
この肉体一つで
泳いでいる
エデン
パラダイス
オアシス
ユートピア
眩しい看板の文字が
夢のように
悲しい空間を
さざ波のように
うめている
それでも
わたくしは
部屋に飾られた花が
好きだ
電信柱にとまって
鳴いていた
夕暮れの蝉の声が
好きだ
本当は
がっかりしたくせに
この
年老いた
わたくしの肉体を
無理に
愛してくれた
男たちが
好きだ
それでも
わたくしは
幾重にも罪を重ね
よごれた
女たちの肉体を愛する
わたくしを
生んでくれた
あなたを愛する
いつまでも
いつまでも
愛しつづける
ことができる
わたくしという
冷酷な魂は
泣き叫ぶ
幾千万の
人々を前に
なすすべもなく
心を閉ざしてきた
この罪の報いを受け
いつか
燃え滾る
太陽の炎に
焼き尽くされ
やがて
宇宙の灰と化し
未来永劫
終わることなく
この宇宙の果てを
さまよい
つづけていくだろう
だから
あなたが
困った時には
いつでも
わたくしの
名前を
呼べばいい
わたくしは
あなたの
涙の粒から
うまれ落ち
いつでも
あなたの
身代わりに
なるから
誰もが
わたくしを
こう呼んでいる
「かみさま」